「指揮芸術について」より ヴァン・クライバーン 1
すでに国際チャイコフスキー・コンクールの第一次予選後にはモスクワの「音楽家たち」のあいだで、審査員や聴衆に強烈な印象を呼び起こした一風変わったアメリカの若者について話が出ていました。私はその当時ソ連南方の演奏旅行の最中だったので、それを私に話したのはそこへ来たモスクワっ子の一人でした。
――話によると、コンクールの参加者の中にアメリカ人か誰かが現れ、わが国のピアニストにとってかなりのライバルになっている。聴衆はすぐに彼を拍手喝采するようになった。彼がチャイコフスキーを弾いたかどうかは知らないが、彼のモーツァルトは最高だったというものでした。
わたしがモスクワに戻ったのはもう二次予選があった後で、すぐにコンクールの夜間撮影に招待されました。そこでわたしはヴァン・クライバーンと知り合ったのです。
一度でもカラー映画の撮影に立ち会った人なら分かるでしょう、その進行がどれほどの苦痛と緩慢さをともなうかということが。ライトのセッティングと装置の配置のあいだ中、「対象」つまりこの場合はオーケストラとソリストですが、長い間話に興じたり新聞を読んだりしながら照明の下で座っていなければなりません。「カメラ」とようやく掛け声が響いたときには、全員がどれほど「恍惚状態」になっていることか。それでクリエイティブなコンディションにもっていったり、そのフィルム用にあらかじめ指定された小節をいくつかうまく演奏できるよう自らを叱咤するのは困難になってしまいます。